2023/06/12 14:47
食への安全・安心や農業分野における環境負荷に対する意識向上から、「有機栽培」「オーガニック」「自然栽培」といった言葉の認知も高まり、意識的にそれらの商品を購入している方も多いかと思います。
しかし、これらの違いを正確に理解している方は、意外と少ないのではないでしょうか?
本記事は、「これら農法の違いは何か?」「それら農法のメリット・デミリット」についてご紹介します。
それぞれの栽培方法の違い
・以下の表は、「慣行栽培」「特別栽培」「有機栽培」「自然栽培」の大まかな違いをまとめたものです。
・「農薬」「肥料」「遺伝子組換え技術」の使用や、「耕作・除草」を行うか否かにより、それぞれの農法を区分出来ます。
慣行栽培とは
・「慣行」という言葉が、「古くからの習わしとして行われている」「ふだん、習慣として行うこと」を意味しているように、「慣行栽培」は日本を含む世界中で一般的な農業プラクティスです。
・「慣行栽培」は、法律及び自治体やJAなどの指導に沿って、「化学肥料」「農薬」「除草剤」などを使用しています。
・慣行栽培」には、遺伝子組み換え作物の使用も含まれることがあります。
・特別栽培農産物・有機栽培・自然栽培などの表示が特にない農作物は、「慣行栽培」で作られたものです。
特別栽培とは
・「特別栽培」とは、「慣行レベル」と比べ、、農産物の収穫までに農薬と化学肥料の使用を抑える栽培方法です。
・「慣行レベル」は、農林水産省の「特別栽培農作物に係る表示ガイドライン」に沿って、地方自治体が、各々の地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の使用状況を鑑みた上で定めます。
・「慣行レベル」に比べて「節減対象農薬の使用回数が50%以下」、「化学肥料の窒素成分量が50%以下で生産された農産物」は、「特別栽培農産物」の表示が認められます。
有機栽培とは
・「有機栽培」は、2006年に策定された「有機農業推進法」により以下のように定義されています。
①化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない
②遺伝子組換え技術を利用しない
③農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する
・「化学肥料(鉱石や空気中の窒素ガスなど、自然界に存在する無機物を原料に化学合成した肥料)」の使用は不可ですが。「有機肥料(油粕や米ぬかなど植物性の有機物、鶏糞や魚粉、カキ殻など動物性の有機物を原料にした肥料)」の使用は認められています。
・天然物や天然物由来の一部の農薬に限り、使用することが許されています。
有機JAS認証とは
・有機JAS認証とは、農林水産省が定めた基準をクリアした農産物を消費者に届けるための制度です。
・以下、有機JAS認定の主な条件です。
①化学肥料や禁止農薬、遺伝子組換え技術を使用していないこと
②種まきや植え付けの前2年以上、禁止された化学肥料や農薬を使用していない健康な水田や畑で農産物を生産していること
③栽培から出荷まで記録を取り、農産物がどのように生産されたかの確認ができること
など
・上記の条件などをクリアした生産者によって生産された農産物を晴れて「有機農産物」「オーガニック」と呼ぶことができます。
自然栽培とは
・「自然栽培」という明確な定義はなく、「自然農法」「自然法」という言葉もあります。
・「自然栽培」「自然農法」「自然農」の共通点は、以下のように整理されます。
①できるだけ人の手を加えず、自然の力を最大限に引き出す
②化学肥料・動物性有機肥料・農薬・除草剤は使用しない
③植物性有機肥料の使用及び耕起・除草は、農家さんによって異なる
・一般社団法人MOA自然農法文化事業団では、自然農法の基本が以下のように示されています。
①土の偉力を発揮させる
②自然の仕組みや働きを基準にする
③土壌や作物に愛情をかける
④計画的な作付けを心がける
⑤作物に適した日当たりと水分を確保する
⑥自然農法で育てた種を用いる
MOA自然農法マーク
「MOA自然農法ガイドライン」に記された基準とルールに従って、栽培された農産物に貼付されるマークです。
①自然農法マーク
自然農法を継続して24ヶ月以上の農産物に貼付されるマーク
②MOA自然農法転換期間中マーク
自然農法を継続して6ヶ月以上24ヶ月未満の農産物に貼付されるマーク
③MOA特別栽培マーク
化学肥料を使用せず、農薬だけを制限的に使用した農産物に貼付される
それぞれの栽培方法のメリット・デミリット
・有機栽培・自然栽培は、慣行栽培に比べて農作物の生育スピードが遅く収穫量が少ないというデメリットがありますが、環境負荷が低い栽培方法です。
・また、有機栽培・自然栽培で育てられた作物は、栄養分が高く作物本来の味がします。
・一方、有機栽培・自然栽培の作物の販売価格は慣行栽培に比べて高めです。